[トリビア]『ジョン・ウィック』の劇中で”Hitman”(殺し屋)という単語は一度も使われない

明日使えないムダ知識をあなたに
 

概要

いきなりですが、ジョン・ウィックというキャラクターは、元々何の職業の人だったでしょう?

あなたの頭に一つの答えが浮かぶはずです……しかし、その単語、本当に映画の中で使われている単語ですか?

タイトルの通りですが、実は映画『ジョン・ウィック』および『ジョン・ウィック:チャプター2』の劇中で、“hitman”(殺し屋)や”assassin”(暗殺者)という単語は、一度も使われないという事実に、ふとしたことで気付いてしまいました。

そうだったっけ? と思う方はぜひ今すぐBD/DVDを引っ張り出してぜひご確認ください。

面倒だという方のために、以下、検証内容をお届けします。

検証

まず、ジョン・ウィックの本性が最初に明らかにされる例のシーンから。

  • ヨセフ「相手? あんなの誰でもねえだろ」(Who? That fucking nobody?)
     
    ヴィゴ「その”誰でもない男”は――ジョン・ウィックだ。以前彼は我々の仲間だった。別名は”ババー・ヤガー”」(That “fuckin’ nobody”… is John Wick. He once was an associate of ours. We call him “Baba Yaga.”)

    ヨセフ「ブギーマン?」(The Boogeyman?)

    ヴィゴ「厳密にはジョンがブギーマンなのではない。そのブギーマンを殺すために送り込む男が、彼だ」(Well John wasn’t exactly the Boogeyman. He was the one you sent to kill the fucking Boogeyman.)

    ヨセフ「Oh…」

ここで一度もジョンという男の具体的な職業名は言及されません。しかし、この台詞だけでどれほどジョンが恐るべき存在なのかが、端的に示されています。

 

という感じで、この後のどんなキャラの台詞でも、一度もジョン・ウィックのことを「殺し屋」と呼ぶものはありません
誰もが皆、遠回しな形でジョンを仕事人として呼びます。

  • サンティーノ「だから実体の無い幽霊(ロ・スペットロ)が必要なんだ、ジョン・ウィック。つまり君のことだ」(That’s why I need a ghost, lo Spettro, John Wick. That’s why I need you.)
  • バワリー・キング「こいつは驚いたな。ジョン・ウィック。最強の男、神話にして伝説」(As I live and breathe. John Wick. The man. The myth. The legend.)

ただし、日本語字幕や吹き替えの中でなら、「殺し屋」という言葉は使われています。しかしそれは、いずれも文脈から分かりやすく意訳した形の使われ方であり、原文の英語では、やはり一度も「殺し屋」という単語が直接登場することはありません。

  • ジアナ「ジョン、あなたが引退できたのは、誓印のおかげ? あなたが殺し屋に戻る原因となった女性の名は?」(Tell me, John. This marker… Is it how you got out? And what was her name, this woman whose life has ended my own?)
     
    ※二番目の台詞は直訳すると「私の人生を終わらせる原因となった女性の名は?」という意味になり、殺し屋にあたる単語はどこにもありません。
  •  

  • サンティーノ「ニューヨーク中の殺し屋に奴を狙わせた。二度と会うことは無いだろう」(I have everyone in New York looking for him. I doubt we’ll see him again.)
     
    ※最初の台詞は直訳では「ニューヨーク中の全員」という意味だけで、やはり殺し屋とは言っていません。

そして、この法則はジョン・ウィックに対してだけのことに限りません。
劇中でいわゆる「お仕事」をしている人達――マーカスもミス・パーキンズも、カシアンもアレスも――具体的に何の職業の人達なのか、実は今まで全く語られたことは無いのです。

あの人達、本当のところ何をしている人々なのでしょう?

この映画で、彼らの職業または立場を正確に表しているといえる単語が一つだけあります。“contract”です。

  • ヴィゴ「やはり失敗か……。ジョン・ウィックに対し殺し屋を雇え」(Of course he did… Put a contract on John Wick.)
     
    アヴィ「金額は?」(How much?)
     
    ヴィゴ「200万」(Two million.)
  • サンティーノ「私が死んでも殺し屋は来る。私を殺せば、事態は一層悪くなる」(Killing me won’t stop the contract. Killing me will make it so much worse.)

つまり、『ジョン・ウィック』の世界では、”hitman”や”assassin”と呼ばれることは無いものの、人殺しを生業としている大勢の人々は全部”contract”と言えるかもしれません。

しかし、またしても注意が必要なのは、“contract”という単語自体は、人を指す意味では使えないということです。ちょっと辞書を見てみましょう。

contract /ˈkɒntrakt/
NOUN

  1. A written or spoken agreement, especially one concerning employment, sales, or tenancy, that is intended to be enforceable by law.
    • 1.1 [mass noun] The branch of law concerned with the making and observation of contracts.
    • 1.2 informal An arrangement for someone to be killed by a hired assassin.

……(以下略)

引用元:Oxford Dictionaries https://en.oxforddictionaries.com/definition/contract

上記の通り、”contract”という語はあくまで「契約」「合意」という意味があるだけなのです。
したがって、映画での”contract”に対する日本語字幕や吹き替えは、やはり意訳によって「殺し屋」(を送る契約)という意味にしているだけであり、原文の英語では、ジョン・ウィックやその他大勢の「お仕事」をする人々のことを、具体的な職業名で呼んではいないのです。

 
この台詞回しの異様なこだわり、個人的に凄いことだと思います。
観客は、ジョン・ウィック達の職業を何となく理解した気で観ているし、実際それで鑑賞上何の問題も無いのですが、全部それは観客の先入観を利用した上で成り立っている世界観なんです。

あるいは、「既に分かりきっていることはわざわざ語らない」というポリシーに基づき、観客の理解力を信頼して語られているストーリーとも言えます。これが『ジョン・ウィック』シリーズを貫く、一種のスタイルなのでしょう。

次回作以降では、彼らを何らかの職業名で呼ぶことはあるのでしょうか。それとも同じスタイルを通し続けるのでしょうか。
そんなわけで、今後はぜひ原文の英語の台詞にも注目するとまた楽しみがあると思います。

「……こうしてこの世界にまた一つ新たなトリビアが(略)」

ちなみに

映画本編ではありませんが、映画のサウンドトラックのタイトルでは、”Assassin”という語が使われています。
1作目で最初にヴィゴの手下達が夜討ちをかけに来るシーンの曲です。

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カテゴリー: 良いモノ語り, 良いモノ語り -映画

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