アルバム『Violence』(かんたん感想)

Editors(エディターズ)の第6作目のアルバムが!約2年半ぶりに出ました!…と当たり前のようにこの投稿を書き始めようとしましたが、ふと手を止めて冷静に考えました。

6枚目のアルバム。今私が持ってるどのアーティストのCDよりも多い数です。個人的にもともと好きになるバンドの数は少ないんですが、これだけ多くの数のCDを持つことになるなんて今まで想像したこともありませんでした。

ヴァイオレンス

レビュー

いやもう、本当にどうしたら良いんでしょうか? このバンドは毎回最高傑作を作ることしかできないんでしょうか? と思ってしまうほどとんでもなく素晴らしいサウンドでした。軽率な発言と分かってても、私は迷わず「最高傑作」と評したいです。『Violence』というアルバムは、Editorsをさらなる高みに導きました。

サウンドの印象を一言で言い表すなら、まさにヴォーカルのトム自身が言う通り、”Brutal(粗暴)”
シンセサイザーは前作『In Dream』から引き続き残されていますが、ギターサウンドはかつてないほど鮮やかで鋭くなり、ドラムビートはかつてないほど激しくなっています。踊り出したくなるほどの躍動感。クリアでどこまでも広がっていきそうな開放感。
今回も何か一つの統一的なテーマやコンセプトに沿って作られたアルバムではありません。詳しくは2017年9月の↓のインタビューを参照いただきたいんですが、ベースのラッセルは今回のアルバムを、一曲一曲の継ぎはぎ(patchwork)的な制作と回答しています。

Editors on their next album, career highlights + their soaring popularity in Europe – GIGWISE
https://www.gigwise.com/features/110679/editors-on-their-next-album-russell-leetch-and-ed-lay

同じインタビューの中で、過去作のサウンドとの比較について問われた際、ラッセルは「『An End Has A Start』と『In Dream』に掛け合わせた」感じと答えてますが、私の印象もまさにそんな感じで、『AEHAS』のギターの疾走感と『In Dream』のシンセ主体の音作りが互いに絶妙なバランスで着地したイメージです。

それにしても、この『Violence』というタイトル。初めて見た時はどきりとさせられました。なんて不穏な単語でしょう。ある意味で彼ららしくないワードチョイスだと最初感じました。改めて過去のアルバムタイトルを振り返ると、

『The Back Room』=「奥の部屋」
『An End Has A Start』=「終わりが始まる」
『In This Light and On This Evening』=「この黄昏のこの光の中で」
『The Weight of Your Love』=「お前の愛の重さ」
『In Dream』=「夢の中で」

このラインアップの中に、この一単語が加わるわけです。

『Violence』=「狂おしき力」

2016年にイギリスはBrexitという大きな局面を迎えていて、そういった情勢がバンドの心理にも何かしら影響を与えていたのかもと勘繰ってしまいいました。先行公開されていた『Magazine』や『Hallelujah (So Low)』の印象もあり、今回どこかポリティカルなとげとげしさに走ってしまうのではないかと。

そういった心配は、結局は杞憂で済みました。時代が新しくなってもEditorsはEditorsらしさを見失ったりしていません。そして同時に、Editorsは常に新しい存在に生まれ変わり続けていきます。
それこそがきっとこのバンドの姿なんでしょう。一つ所に安住せず、常にどこかを目指して進み続ける。私の憧れているスタイルです。

では、以下でいつもの通り各曲レビューを。

 

  1. Cold

    You were waiting for elation
    Like it would fall out of the sky
    Maybe time’s the greatest healer
    But baby everything will die

    (お前は高揚感を待っていた
    空から落ちてくるような感覚を
    時間は最良の癒しかもしれない
    だけどどんなものもいつか死んでいくんだ)

    この曲の初披露は2017年のSouthside Festivalで、以降のライブでもだいたいこの曲がオープニングに来ているようです。シンプルな電子音とヴォーカルで始まるイントロから、徐々に音を膨らませていって重層感を増していく構成にはバンドの揺るぎない自信を感じます。何よりもギター! ギターがカッコいい! まるでバンド初期の時代の疾走感がカムバックしたかのような感動を覚えます。

  2. Hallelujah (So Low)

    I bleed like a millionaire
    My bones lay with dust in your care
    Just don’t leave this old dog to go lame
    This life requires another name

    (俺は億万長者のように血を流す
    俺の骨は砂塵で埋められる お前の手に委ねられ
    この老いた犬を足の悪いままにしておくな
    この命には新しい名前が必要だ)

    この曲も2017年からライブで先に披露されていた曲。アコースティックギターが良い味出してるんですが、サビの後に来る猛り狂うようなギターセクション! 今までの曲には無かった、まさにBrutalを象徴するようなサウンドで超好きです。

  3. Violence

    It makes it harder to join the dots
    The river gets wider in front of us

    (難しくなっていく 点と点を結ぶのが
    川は広がっていく 俺達の目の前で)

    タイトルカバー曲だからといって、この曲を先に公開しておかなかったのは、多分正解だったんでしょう。というのも、この曲をアルバムという文脈(またはライブという文脈)から切り離して紹介しようとすると、おそらくニューアルバム全体に対して誤った先入観を持たせてしまうかもしれなかったからです。
    それぐらい、この曲は尖ってます。まるでユーロビートみたいな疾走感。サビのコーラスが導き出す救済の感覚。今回のプロダクションに関わったブランク・マスの存在を感じるというか、一番新しい息吹を感じさせる曲です。リピートが止まりません。

  4. Darkness At The Door

    I must manege expectation
    My idols are revelations
    I hope I never meet them

    (何とか期待に応えようとする
    憧れの存在の意外な事実
    俺はできることなら会いたくない)

    タイトルの暗さから想像もつかないほどアップテンポで展開の速いナンバー。でも歌詞の内容を見ると、実は一番昔ながらのEditorsらしい、閉塞感やダークさを感じさせてくれる気がします。

  5. Nothingness

    We wait in line for nothingness
    We wait in line for nothingness
    This angel needs some tenderness
    This angel needs some tenderness

    (俺らは列をなして虚無に帰るのを待つ
    俺らは列をなして虚無に帰るのを待つ
    この天使に必要なのは少しの優しさ
    この天使に必要なのは少しの優しさ)

    サビのグルーヴ感が癖になって一緒に口ずさみたくなる心地よさです。改めて新時代のEditorsを感じさせるような一曲。ちょっと注目したいのが、歌詞のとある一節。

    I’m not here for the show
    I’m not buying it
    Five steps back from the past if you dare

    (ショーのためにここにいるわけじゃない
    その手には乗らない
    過去から5歩離れてみろ その気があるなら)

    このアルバムは6作目。それまで過去に彼らが作ったアルバムは5作。
    これだけ長くバンドとして続いてきても、Editorsはいまだに初期の名曲『Munich』や『Bullets』などでしか語られないこともあります。最初に世間の評価を浴びたのがその曲だったからでしょう。最近の代表曲を知ってる人は今どれぐらい多くいるんでしょうか。「過去から5歩」の数字の背景には、何かしらフラストレーションがあるのかなと思わず勘ぐりたくなります。
    でも、そんなものにも彼らは縛られることは無いんです。

    We let it all escape
    We let it go
    We let it go

    (俺達はみんな逃がしてやる
    そのままにして
    ほうっておくんだ)

    期待感を上げまくってから、3分52秒あたりで炸裂するギターの破壊力が本当にシビれさせます。大好き。

  6. Magazine

    I got a little secret for you
    It’s in a magazine
    You got an image to keep safe
    Bitten nails stay clean yeah

    (俺はちょっとした秘密を握ってる
    それは雑誌の中に隠した
    お前の頭には浮かんでる 保身のための術が
    心配性でいれば潔白のままだ)

    2017年ツアーの初披露で聴いた時から、この曲はビッグになるだろうというイメージが何となく浮かびました。歌詞のメッセージは、ポリティカルでシニカルです。最近書かれた歌詞なのかと思ったら、↓のインタビューでのトムの話によると、4thアルバムの前の時から既に構想自体はあったみたいです。

    Editors – ‘Magazine’ | Song Stories
    https://youtu.be/cDuEHMj1EHs

    3rdアルバムの『Eat Raw Meat=Blood Drool』も政治的なテーマを持った歌詞なので、2010年ぐらいにそういうメッセージを訴えたい気持ちがどこかあったのかもしれません。でもライブで盛り上がれる曲なのは間違いないでしょう。サビの後のギターセクションが本当にカッコいいです。欲を言えば、アウトロのメロディのループは2回じゃなくて、ライブの時みたいに8回で聴きたかったな……

  7. No Sound But The Wind

    Help me to carry the fire
    To keep it alight together
    Help me to carry the fire
    This road won’t go on forever

    (火を運ぶのを手伝ってくれ
    一緒にそれを灯し続けよう
    火を運ぶのを手伝ってくれ
    この道も永遠に続くわけではない)

    今更この曲自体への説明は不要でしょう。2010年のライブからずっと歌い続けられてきた曲です。実に8年の時を経てようやくアルバムに収まることとなりました。この曲のインスパイア元である、コーマック・マッカーシーの小説『ザ・ロード』を自分でも読むようになるぐらい好きなので、もう言葉で言い尽くせない思いがあります。トムの中では最終的にピアノの演奏で歌うイメージが固まったんだな、と思いました。
    でも個人的に一番好きなのは、2011年の『You Are Fading』に収録されたスタジオ版だったり……

  8. Counting Spooks

    We’re holding it together
    Counting spooks forever
    I’m just so tired of numbers

    (俺達は一つになって
    スパイを永遠に数え続けていく
    数字にはもううんざりだ)

    スケール感が大きくてメロディアスなテーマが印象に残ります。これまた歌詞にメッセージ性を感じさせますし、そしてクライマックスのストリングス、そしてギターの鮮やかさが本当にカッコいいです。トリッキーだけどそれだけで終わらないような奥深さを感じます。

  9. Belong

    Never belong to anyone else but me
    Never belong to’em

    (俺以外の誰にも属さない
    奴らにも属さない)

    トリにこんな強烈な曲を持ってくるの反則過ぎ!って言いたくなるくらいに強烈です。何がって、もうその曲構成、メロディ、ビート、歌詞の全てです。”belong”という単語には命令形の用法は無いのに、あたかも迫ってくるかのような、退廃的で閉塞的なメッセージを感じます。凄すぎませんかこの曲……。溺れてしまいそうです……。

    Welcome home
    How long’s it been
    A wilderness is in me
    A wilderness is in me

    (おかえり
    久しぶりだな
    荒原は俺の中にある
    荒原は俺の中にある)

  10. The Pulse

    It’s the same idea
    over and over again
    The storm is here

    (同じアイデアが
    何度も何度も繰り返す
    嵐が近づいてる)

    個人的にこのボーナストラックは超嬉しかったです! 上の2016年のライブ版を聴いた時から一目惚れで、スタジオ版をずっと聴いてみたかったんです。ライブ版よりはキーを落としていますが、ギターのカッコよさは残されてて好きでした。

ここまで一曲ずつ振り返ってきましたが、本当に新しいエネルギーとパワーに満ちたアルバムでした。決してそのタイトルから連想されるようなネガティブさはありません。むしろ、私達が生き抜いていくために必要な力です。

このアルバムでEditorsというバンドのことを再確認できたというか、彼らの音楽の本質について色々と考えさせられました。自分でも不思議なんですが、本当に私、このバンドの曲だとどれも好きになってしまうんです。彼らが自分の意志に従って曲を作っているなら、私の好みの方が彼らの作る曲に合わせていくのか。結局そこに違いは無いんでしょうけど……。

本当に素晴らしい6thアルバムでした。過去のどの曲にも似てなくて、それでいてEditorsらしさはそのまま残り続けています。
祈りましょう、彼らがこれからもユニークであらんことを。
これからも「オルタナティブ」であらんことを。

Long live Editors!

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カテゴリー: かんたん感想, かんたん感想 -音楽

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