映画『ジョン・ウィック』  (かんたん感想)

映画の当たり年である2015年。ある意味で一番楽しみにしていたかもしれない映画が、実はコレでした。(本気です。)
公開初日には観に行けませんでしたが、IMAXでたっぷり堪能してきましたよ!

イントロダクション

裏社会から足を洗った元殺し屋が、愛犬を殺し愛車を奪ったロシアンマフィアを相手に復活し、一人で本気の復讐をかけるアクション映画。

監督のチャド・スタエルスキーはスタントマンの経歴があって、キアヌ・リーブスとは既に『マトリックス』や『コンスタンティン』の頃からの付き合い。実際に身体を張った経験がある人の監督というだけでも興味湧きます。

そして、主演がそのキアヌ・リーブス。正直ここ数年、お世辞にもヒット作に恵まれてるとは言い難い状況だったのが、この作品で名実ともに「復活」。実際、主人公のキャラクターを考えても、彼以外に似合う俳優が思い浮かびません。(でも正直あの髪型は……)
ジョンに追い回されるマフィア役にはミカエル・ニクヴィストアルフィー・アレン。ニューヨークの独特な裏社会の面々には、エイドリアンヌ・パリッキイアン・マクシェーンパトリック・ケリー(『コマンドー』のサリーの人……!)。そして、重要な脇役としてウィレム・デフォーも。

アメリカでの公開が2014年10月24日。日本では遅れに遅れて2015年10月16日。(日本の配給会社は1年も何やってたのか……。)

あらすじ

ニューヨーク・マンハッタンのある港の倉庫に、血まみれになった男、ジョン・ウィック(演: キアヌ・リーブス)が辿り着く。歩くことすらできないほど衰弱した彼は、道に座り込むと懐から携帯電話を取り出し、彼の妻ヘレン(演: ブリジット・モナハン)との思い出の動画を再生し始めた。
数日前のこと。5年間付き添ってきたヘレンが、重い病のため息を引き取った。一人深い悲しみに暮れるジョンだったが、埋葬の日の夜、ある贈り物が届く。それは、1匹の犬だった。添えられた手紙にはヘレンの字で、自分が先立つことで孤独になってしまうジョンのことを案じ、愛することができる存在を見つけられるように贈る、とあった。ジョンはその犬をデイジーと名付け、大切にした。
翌朝、彼はデイジーと共に、愛車の69年式フォードマスタングに乗り、外出する。立ち寄ったガソリンスタンドで、ロシア語を話す不良風の若者に絡まれ、「車を売ってくれないか」と言われる。ジョンはその言葉を突っぱねて、その場を立ち去った。
深夜、ジョンと共に寝ていたデイジーが急に目覚め、吠え始める。不審に思い自宅の寝室を出たジョンは、そこで突然複数の男に殴られる。男達は車のキーを探して家を荒らしまわり、そしてジョンの目の前でデイジーを殴り死なせてしまう。男の一人は、ガソリンスタンドでジョンに絡んだ若者だった。殴られて気絶したジョンは翌朝、マスタングが奪われてしまったことを知る。
若者は奪った車でとある自動車整備場に乗り入れ、車の登録情報を偽造しようとした。整備場のオーナー、オーレリオ(演: ジョン・レグイザモ)はその車を見るなり、「どこでその車を見つけた」と若者を殴りつけて帰らせる。その後ジョンがオーレリオの元を訪れ、若者の正体がロシアンマフィアのボスの息子、ヨセフ(演: アルフィー・アレン)であることを知る。
一方、ヨセフは、父のヴィゴ(演: ミカエル・ニクヴィスト)に呼び出され、車を誰から奪ったのかと問い質される。そしてヴィゴは、犬の飼い主であり車の持ち主であったジョン・ウィックは、かつて暗黒街の殺し屋を始末する「伝説の殺し屋」だったことを語り始める――。

〈↓ネタバレあり Spoiler Alert!↓〉
・映画『ジョン・ウィック』

レビュー


 

荒唐無稽さとリアリティの絶妙なマッチング

アクションがこの映画の全てです。
ストーリーは、元殺し屋がいかに悪者相手に皆殺しを始めてしまうか、という動機を作るためだけにあります。それがどれだけもっともらしいかということは、この際全く関係無くて、ただ筋が通ってればOKなのです。あとは、アクションをいかに見せるかということにかかります。

この映画は、とても奇妙なバランス感覚の上に成り立っていると感じました。要するに、非現実性と現実性のさじ加減です。
銃(ガン)+カン・フー=ガン・フーというアクションジャンル、本来なら実践的ではなく、「ありえなさ」しかありません。普通は拳銃握ったまま、同じように銃を持ってる相手の懐まで飛び込んだりしないじゃないですか。近接戦は普通は刃物じゃないですか。でも、それを可能にしてしまうために、ガン・フーなるジャンルに(劇中では一度もそう呼称されませんが)この映画は依拠しています。
ガン・フー系列アクションの歴史については、映画公式サイトにあるコラムが勉強になるんですが、そこからも分かる通り、この映画のガン・フーは過去作と一線を画しています。『リベリオン』が完全にリアリティ度外視で、ただひたすらファンタジックでロマンなカッコよさを追求したものだったとしたら、今作はかなり実践寄りに見えてしまいます。

『ボーン・アイデンティティー』以降、殺し屋映画というジャンルは、リアリティこそが求められる要素になったと個人的には感じています。人殺しの技術やテクニックに宿る合理性というか現実性が、人殺しという非日常的な行為と観客とを結びつけるために、無くてはならないようになったわけです。
その流れでいけば、この映画もリアリティとは切っても切り離せません。それでも、今作はそのバランスが他にはない独特な仕上がりでした。

アンリアルを感じる要素で言ったら、殺し屋が集うホテルとか、ジョンにビビって仕事放棄してしまう警察とかです。これはもう世界観の一つとして成立してしまっています。序盤のジョンの自宅やその周辺が、とても日常的で現実的な土地だったのに対し、コンチネンタルホテルはそことは対照的な、まさにNYの別世界の象徴みたいな場所です。だからこそ、そこに関わる描写はどこか幻想的な方に寄っていっています。

その一方で、この映画はリアリティを感じさせることを意図した要素も随所にあります。

  • 「ダブルタップとヘッドショット」:
    ここ最近の映画でここまで射撃のヘッドショット率の高い映画って無かったかもしれません。ヘッドショットを狙うのは、敵を一発で倒して余計な弾を使わずに済ませる戦略です。ですが、ここまで執拗にやる主人公も珍しい。立っている敵相手でもそうですし、投げ技によって相手を床に倒し、身動きを取れなくした上で頭を狙うというのも、ありえないけれど理に適ってはいます。
    またダブルタップ(胸と頭に一発ずつ撃ちこむ)を頻繁にやってます。(プールから上がってきてジョンを遮った屈強な男に対しては、ダブルどころかクワドロでした。)いずれにしても、殺し屋らしく、効率的に確実に敵を無力化する射撃ばかりで、とにかく無駄に撃ちまくっているという印象がありません。
  • 「目的に合わせた武器の変更」:
    最初にレッドサークルに潜入した時は、ナイフだけを使っています。監視に気付かれないよう、音を出さないため。しかし、やむを得ず見つかってしまうと、グロック拳銃を取り出して敵を倒します。さらに、逃げたヨセフがガラスの向こう側に入ったのを見ると、グロックからより大きな拳銃であるH&Kに持ち替えて発砲します。ここまで説明は全くありませんが、全て目的に応じた使い分けです。
  • 「こまめなリロード、そして被弾」:
    銃のリロードのシーンも何回も見せつけられます。レッドサークルのVIPルームで、男の喉首を銃口で小突いた後、目の前でリロードするシーンなんかも面白いです。
    一方でジョンも撃たれて傷つくシーンもあります。弾が都合よく当たらないなんてことはなくて、彼でも油断すれば被弾してしまう。彼がコミック的な「無敵」ではなくて、あくまで地に足の着いた強さであることがうかがえます。
  • 「撃つ人間と撃たれる人間が同じフレーム内に収まる」:
    これが地味ながら一番リアリティに影響を与える要素だと思うのですが、敵が撃たれるシーンのほとんで、ジョンも同じ画面内に映っています。
    ハリウッドの一般的な撃ち合いのシーンでは、味方が銃を撃つ姿をその前方から映して、次にカットが切り替わって撃たれる敵を映すという流れです。

    ところが、『ジョン・ウィック』では、撃つ人間も撃たれる人間も同じフレーム内にいることが大半。他のシーンでも思い出していただきたいんですが、だいたい同じような感じだと思います。
    まずこうなる原因は、ガン・フーという戦術の性質上、敵に極力接近する必要があるので、必然的に同じフレーム内で収まるような距離が多くなるというわけです。
    そして、それによる映像上の効果は、「主人公が撃って敵役が撃たれるリアクションをする」という当たり前のことが、より自然に見えてくることです。カットが変わるということは、ただそれだけで「違う映像になる」という印象を作ります。実際、撮影する時には撃つ姿と撃たれる姿は別々に撮っても良いわけなので。しかし、それがシームレスに一つの映像内に見えるようになると、複数の俳優達の息の合ったアクションがより生きてきます。そこに無意識のうちに、私達はリアリティを感じさせられています。

独特の掟が存在する殺し屋達のコミュニティー、ガン・フーという戦闘術、という荒唐無稽な設定を抱え、その一方でリアリティへの追求には余念がないという奇妙なバランス。この映画はその絶妙なポイントを見つけていて、今までの殺し屋アクションにはないものを見せつけました。
個人的にはもう期待を全く裏切らない(または良い意味で裏切ってくれた)映画で、IMAX映像でも正直あと何回か楽しみたい気分です。
もう既に続編の制作も決定していることですし、このシリーズのアクション映画への影響度は今後かなり重要になるはずです。

雑感

「一人残らずだ」

最初の自宅襲撃シーンの直前のやり取り。

「彼は何と?」(What he said?)
「……無言だ」(Enough.)
「まずい……」(Oh god.)
「部下を集めろ」(Task your crew.)
「な、何人です?」(How, how, how many?)
「一人残らずだ」(How many do you have?)

このシーンで、同じ殺し屋映画である『レオン』のあの名シーンを思い出してしまいました。もしかして、オマージュ?

「ベニー、全員呼び出せ」(Benny, bring me everyone. )
「全員って?」(What do you mean everyone?)
「”全員”だ!!!!!」(Everyone!!!!!)

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