アルバム『In Dream』 (かんたん感想)

前作『The Weight of Your Love』から2年と3か月。Editorsの新作を待っている間の時間は、自分にとってはいつも果てしなく長いです。
そういうわけで、今回で彼らのアルバム『In Dream』も通算5作目。今年唯一にして一番楽しみにしていたCD。いや本当に……、本当に何より待ち望んでいました。

イン・ドリーム

イントロダクション

今年は、2005年の1stアルバム『The Back Room』から10周年という年でもあり、今作は彼らにとっては一つの節目となるアルバム。
これまでのアルバムは、毎作誰かしらプロデューサーとタッグを組んで製作されていましたが、今回は初のバンドによるセルフ・プロデュース作となったようです。ある意味では今までで一番バンド自身の価値観が自由に発露しているアルバムかも。
2015年の4月には先行シングル『No Harm』がリリースされ(この時点では時期的に夏にアルバム発売かと思ってました……)、6月には『Marching Order』、8月には『Life is a Fear』がそれぞれ発表。こうして見るとアルバム発売までに2か月ごとに何かしら発表してたんですね。

あと、ミュージック・ビデオやジャケットの撮影まで、写真家のRahi Rezvaniとコラボしてるのも今作のプロモーションの特徴。常にモノクロ調の画像が印象的で、バンドの雰囲気とはよく合っていると思います。

レビュー

全体としては、前作よりもコンピューターとエレクトロニック色が強まっていて、そこはかとなく3rdアルバム『In This Light And On This Evening』の音に回帰したかに聞こえます。が、通しで聴いてみれば、ロックらしい壮大さと世界観の広さは健在。むしろ実態としては、3rd以前に作ってきた音楽路線と、5人編成以後にできてきた新しいバンド路線とがミックスされてできた感じです。(この辺りの感想は、日本版のライナーノーツに書かれてることと同じです。)

アルバムを貫くテーマというものは、今回はあまりはっきりとは見えません。でも個人的に、アルバムタイトルの”Dream”という言葉から「幻想」を感じます。
幻想はEditors初期の曲から繰り返し見られるテーマで、夢とも現実とも付かないようなヴィジョンが歌詞にも現われてきました。今作も例えば2曲目の『Ocean Of Night』、4曲目の『Salvation』、5曲目の『Life Is A Fear』、そして10曲目『Marching Orders』と、どこか現実とは違う世界が見えていそうなサウンドが印象的でした。

あと、途中で雰囲気がガラリと変わる曲が何曲か。7曲目『Our Love』と8曲目『All The Kings』は、初めて聴いた時にはトラックが途中で変わったのかと思いました。それぐらい、今作の曲は構成のバリエーションが多彩だと思います。

各曲レビュー


 

  1. No Harm
    アルバムで最初に先行公開された頃から聴いた曲。このけだるくて憂鬱な立ち上がり。低音からファルセットまで幅広く行き来するトムのボーカル。エコーがかった声に、いつもどこか非現実さを感じます。
    繊細でミニマムにまとまる曲かと思いきや、3分57秒でフェードインしてくるギターが力強さを添えるようでお気に入り。
  2. Ocean Of Night
    イントロのピアノからすっと心を掴まれる曲。明るくてライトで、かなりポップ調。サビのフレーズのリフレインが凄く気持ち良い。ところで彼らの曲で、「海」をテーマとした歌詞はこの曲が初めてだと思います。 スティールパンとハンドクラップもその詞にマッチしてる音だと思います。
  3. Forgiveness
    彼らの初期の頃の、ギターサウンドがメインだった時代を思い起こさせる曲。ベースがめちゃくちゃカッコいいです! ボーカルの独特のリズムも好きでクセになる曲。
  4. Salvation
    ティザー動画で最初に聞いた時から凄く期待してたんですが、初めて全体を聴いてまさに圧倒されました。光り輝いてるようなストリングスのイントロ。そこから一気に低く抑えられたAメロのボーカル。どんどんとムードを高めていくBメロ。そして、一気にエネルギーを解放するサビ。これまで聴いた中で一番神々しいサウンド。
    この曲をライブで聴くことが私の新たな夢になりました。サビを絶叫したい。
  5. Life Is A Fear
    80年代テイストが全開なディスコ曲。レーザーのように尖っててキラキラしているシンセサイザーとベースサウンドが絶妙でハマれます。裏声で繰り返されるサビが、どこか夢の向こうから聞こえてくるような非現実感があって、アルバムのタイトルを一番象徴している、幻想的な曲だと思います。
  6. The Law
    彼らのアルバムって毎回1曲は「面白い」音が入ってる曲があると思うんですが、今回はきっとこれです。Editorsでは初めてとなる、バンド外のアーティストとのデュエット曲。Slowdiveのレイチェル・ゴスウェルがサビのコーラスで参加してます。独特のスローなテンポが好きです。
  7. Our Love
    これまた80年代から90年代っぽいサイケなエレクトロニックサウンド。ファルセットが続くダンスミュージックのような雰囲気ですが、(先ほども書きましたが)3:03から雰囲気が急に変わり、一気に世界観が変容する様が本当に予想外です。
  8. All The Kings
    この曲の旋律の例えがたいサウンドも不思議です。ボーカルのリズムも変則的。歌詞の比喩もかなり抽象的。それでも、だんだんと音が加わって盛り上がりを作っていく構成は伝わってきます。
    ラストのしっとりとしたピアノとビートのインストゥルメンタルのパートは、”the beat of your heart is alone in the dark”(お前の心臓の鼓動は 闇の中で孤独に響く)の詞と呼応しているように感じます。このパートはiTunesのデラックス・バージョンだと別トラックで聴けるようですが、自分は未確認です。
  9. At All Cost
    スローで温もりを感じます。日なたでまどろみかけているような夢見心地の音ですが、サビの”don’t let it get lost”の繰り返しが胸に迫って聞こえます。聴いていると、いいようのない寂しさを感じます。
  10. Marching Orders
    8分近くもあるので、Editors史上最長の曲。音の曖昧なイントロから、だんだんと盛り上げりを形作っていく様がよく分かる曲です。そして、フルバンドのサウンドが始まってからが真のスタート。
    一曲が長いので、その中にいくつもの段階というかフェーズが存在して、スケールの壮大な曲です。これもサビをライブで一緒に歌いたい曲。
  11. Marching Orders (Michael Price Rework)
    前トラックから続けて聴くと、曲の印象を大きく変えつつも、元の曲の良さをよりコンパクトにまとめた”リワーク”トラックに聞こえます。ストリングスがぴったり合ってます。
  12. Alternative : Oh My World
    原曲のバージョンを聞いたことも無くていきなり別バージョンを聴くことになってしまいますが、音がとてもミニマルで密やかな曲です。全体に響き渡る不穏な不協和音をバックに、フレーズのリフレインが耳に残ります。ボーナストラックですけど、ラスト、”sleep”という単語で終わるのが、アルバムタイトルとも繋がります。
  13. 最後に

    最初から最後まで聴き終えて、改めてEditorsというバンドの来歴を思いました。結成から10年以上経って、様々な出来事を経ながらも、こうしてバンドとして今も新しい音楽を作っているということ。1stアルバムから10年という年に完成したこのアルバムは、初期の懐かしいテイストをほんのり感じることもあれば、前作から続けてきた新しい方向性も感じます。
    このアルバムのことは、彼らにとっての一つの到達点だと思いたいです。もうこれ以上上が無いという意味ではなくて、一つ一つ全く違う表情を持っている曲達が、彼らの歴史のことも含めて色々なことを思い起こさせるんです。

    いつになるか分かりませんが、また時間が経てば、次の作品を出してくれるはずです。彼らがまた新しいことを始めたいと思った時に。その時に、このアルバムはきっと彼らにとっての自信となると思います。
    でも、その前にもう1回は日本に来てライブをやってほしいですけどね。その時には何があっても必ず行きます!

    [2015/10/5:一部追記]

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カテゴリー: かんたん感想, かんたん感想 -音楽

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