映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観た (かんたん感想)

イントロダクション

1979年から続く『マッドマックス』シリーズの27年ぶりの続編であり、リブート作。
監督ジョージ・ミラーは70歳にして、自身の代表作を自らリブートします。ここで現代の若手監督とかに引き継がなかった辺りが凄いです。公開後はどこを見ても怖いくらいに絶賛一色で、正直最初は観るのを尻込みしてました。

旧三部作はメル・ギブソンの出世作となりましたが、今作のマックス役はトム・ハーディ。また、もう一人の主人公とも言えるフュリオサ役にはシャーリーズ・セロン
そして、彼らを追う支配者役は、シリーズ一作目にも悪役で出演していたヒュー・キース・バーン。別人役で数十年後にシリーズにカムバックという例も何だか珍しいです。さらに以上の面々にも負けない個性を持ってるのがニコラス・ホルト。『X-MEN』では青色のビーストでしたが今作では全身白塗りに。

オーストラリアでの公開が2015年5月14日、日本では6月20日。

あらすじ

石油資源をめぐる争いから始まった核戦争を経た後の世界。大地はどこも砂で覆われ、灼熱の太陽に照らされていた。マックス(演: トム・ハーディ)はかつて警官だったが、妻子を殺された過去を持つ。彼は命を救い損ねた少女の幻覚にさいなまれながら、愛車インターセプターを駆り、砂漠をさまよっていた。ある時、彼はイモータン・ジョー(演: ヒュー・キース・バーン)の武装集団ウォー・ボーイズによって囚われの身となる。O型の血液を持つ彼は、ウォー・ボーイズのための生きた「輸血袋」として扱われ、背中にタトゥーを刻まれ、顔に鉄製のくつわをはめ込まれた。
岩山の中にある砦「シタデル」は、イモータン・ジョーを頂点とする巨大組織で、大量の地下水やガソリンなどの資源を有し、最下層の貧民達はそのおこぼれに与かって生きていた。フュリオサ(演: シャーリーズ・セロン)は、ジョーの信用を得ている大隊長で、ある日、「ガスタウン」とガソリン取引をする一団の統率を任される。しかし、大型トレーラーのハンドルを握るフュリオサは、進路を途中で東に変更。その異変を目撃したジョーが、自分の子供を出産させるために幽閉していた女性達「ワイブス」の部屋を見に行くと、そこはもぬけの殻になっていた。
怒ったジョーは、ウォー・ボーイズ達を総動員し、フュリオサが連れ去ったワイブスの奪還に向かう。ウォー・ボーイズの一人ニュクス(演: ニコラス・ホルト)も、マックスからの輸血中に騒ぎを聞きつけ、自分も出撃すると言い張る。病に侵され、常に輸血を必要としているニュクスだったが、「輸血袋」を車の先にくくりつけることで戦いに出る。かくして、フュリオサのトレーラーとイモータン・ジョー、そしてニュクス達の追跡劇が始まったが――

〈↓ネタバレあり Spoiler Alert!↓〉
・映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

レビュー


 

狂気だけど丁寧、丁寧だけど狂気

これを観た時点では、『マッドマックス』の旧三部作は未見です。ですが前作は知らなくても理解できるとの触れ込みでしたので、気楽に観に行きました。
『マッドマックス』といったら『北斗の拳』に影響を与えた作品というぐらいの知識しか持っておらず、そんなイメージのままで観に行きましたが、実際ある意味では凄くイメージ通りでした。つまり、ポスト・アポカリプティックな世界で、トゲトゲしい異様な格好をした男達。ボスの命令には何も考えずにとりあえず従って奇声を発する下っ端と、弱肉強食の世界を支配しようとするボス達。
そうではあったんですが、この映画を観て個人的に何よりも印象的だったのは、細部にまで徹底的に練られたそのポスト・アポカリプスの世界観の説明です。

砦「シタデル」は、イモータン・ジョーのカルト的思想が随所に見られる一方で、実際の生活の様子が想像できる要素が映像に含まれています。例えば、人間からミルクを搾り取る部屋の次には、水をたっぷり使って野菜を育てる部屋が映ります。これ、本当は物語には何の影響も与えない描写です。カットしても問題ありません。でも、この描写を挟むことで、世紀末的世界でどんな風に飲み食いしてるのかということが分かります。
また、車のハンドルを取り外して一箇所に集めたり、車を地上に置いておかずに昇降台で上げ下ろしするのは、車を「神聖な」乗り物として見るとともに、こっそり運転して持ち逃げされるのを防ぐ意味があります。
ウォー・タンクに注目すると、車体の側面のドクロの中に拳銃が隠してあったり、シフトレバーを取り外して短剣として使えたり、他にもダッシュボード周りにいくつも武器があったりなど、荒野で遭遇しうる有事への備えが見られます。
さらに、実用性を超えた「デザイン」の面で言うと、ウォー・ボーイズの身体が真っ白で目の周りを黒く塗るのは骸骨を想起させますし、おでこはオイルで黒く塗り、死にに行く前には口の周りに自動車用の銀塗装のスプレー。水を排出するレバーから、ドクロハンドルの紋章、「ハイオク血液」という用語、両手指を交差する「V8」のポーズまで、至る所に自動車のモチーフ。
よくぞここまでと思いたくなるほど統一された世界観です。

重要なことに、これらのうちのほとんどは言葉によって説明されず、ただ映像で見せられるだけです。「なんでそうなってるの?」という話は無く、ありのままにそれを見せる。
映画にとってはそのテンポが一番大事です。言葉で説明し過ぎると、映像の役割が衰えます。この作品は映像だからこそできることというのを大事にしていて、それゆえに台詞は全体的に控えめです。

戦うための世界観

こんな風に世紀末の、普通じゃないマッドな世界観が突き詰められています。でもこの作品の目的はあくまで、ファンタジーやらSFのように世界観を作り込むことでは無さそうです。では何のためにここまでやるのか。

ところで、この世で最も怖い狂気の一つは、「人間が人間として扱われないこと」であり、イモータンのコミュニティーはそれがまかり通っています。マックスは血液袋として扱われ、ワイブスは「私達はモノじゃない!」と脱走します。ウォー・ボーイズが言う、勇ましく戦って死ねば英雄の館(ヴァルハラ)に行けるという教えは、指導者にとって命を湯水のように消費することを正当化します。
そういう狂気的なシチュエーションって、必然的にバトルが発生するものです。今回の映画のアクションの動機はまさにそこにあって、何者かでありたい人間達が多数入り乱れて、大きなバトルを起こします。
アクション映画ってもちろんアクションそのものが一番肝心ですけれど、それを成立させるための物語上の前提がしっかりしている必要があります。
あんまり「乗れない」アクション映画というのは、そういう動機の部分が弱いことがあって、「なんでそこで戦うの?」とか「そんな風に事が運ぶもの?」とか観客に考えさせてしまいます。一連のアクションに現実味を持たせるに足る説得力が本当は必要です。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はその点、まさにアクションを生かすための世界観で成り立ってるようなものです。登場人物のほとんど全員にアクションの動機があるので、本編の大部分がアクションという事態を可能にしています。

この映画の設定の作り込みは恐ろしく繊細で、かつその見せ方も非常に計算し尽くされてます。言葉では説明されないフュリオサとイモータン・ジョーの因縁や、マックスのトラウマ、その他もろもろのキャラクターのバッググラウンド。それを想像するための手がかりが映像のどこかで少しずつ示されているので、この映画はアクションがメインでも、アクション「だけ」になりません。
だから、この映画の狂気って不思議と憎めなくて、むしろ愛らしくなります。

雑感

オレンジと青

映画の出だしから半分ぐらいまで、ほとんどずっとオレンジ系が映像のメインの色彩になっています。砂漠の色もそうだし、火を噴く車のエンジンやギター、爆発など。それで、いい加減観客も目が疲れてくるだろうというタイミングで、今度は急に夜の青色で画面が覆われます。ぬかるみにウォー・タンクがはまるシーンです。ここの色彩の振れ幅はびっくりして思わず舌を巻きました。さっぱり色味が変わってて、映像の印象を単調にしない工夫です。
ちなみに、観ていて↓の記事の存在も思い出しました。
なぜ映画にはオレンジとブルーが多用されているのか? – http://gigazine.net/news/20150508-film-orange-blue/

トム・ハーディの声がアフレコ?

観ていて個人的にずっと気になってたんですが、何だかトム・ハーディの声が、ほんの少し身体の動きとシンクロしてないように感じられました。他のキャストに比べると、彼の声だけ少しだけ大きいというか、喋っている口元より音が近く聞こえました。もしかして彼だけ台詞を録音し直してたり? (『ダークナイト ライジング』のベイン役の時は、マスクを被ったままの台詞が聞き取りづらくて後で台詞を全部録音し直したそうですが…)

音楽

ジャンキーXLが音楽を担当してる映画は初めて観ましたが、最高でした…。パーカッションでとにかくバリバリテンションを上げながら、ストリングスとエレクトロが絶妙でした。お気に入りは、谷のバイク集団とのチェイスシーンで流れる曲。

 
後、タイトルロゴの時から何度も流れるあのストリングスの「ズゥーン ズゥーン」っていう音。自動車のエンジンを「ブオンブオン」と噴かす音を模しているように聞こえてこちらも好きです。

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