アニメ『純潔のマリア』を観終わった (かんたん感想)

イントロダクション

フランスの百年戦争の時代を舞台に、「争い事が大嫌いな」若き魔女マリアが、戦場の運命を大きく変えていく、歴史ファンタジー。
石川雅之の同名漫画が原作。(ちなみに原作は未読で観ました。)
アニメ制作はProduction I.G。放送期間は2015年1月から3月にかけて。

あらすじ

イングランドとの百年戦争の真っ只中にあるフランス。とある森の奥に住む魔女マリア(演: 金元寿子)は、「人が戦うのを見るのが大嫌い」な性格。彼女の森に依頼の矢文を撃ちこむと、戦場で行われる戦いが、魔法によって強制的に解散させられることで知られていた。彼女は、夜な夜な夢魔のアルテミス(演: 日笠陽子)を戦地に派遣し、陣営を問わずに指揮官を骨抜きにしたり、またマリア自身が戦場に出向いて巨大な魔物を召喚することで、兵士達の戦意を喪失させ、逃げ帰らせたりしていた。
そんな彼女の行動は、戦場に駆り出される平民達からは感謝されるが、一方で戦争によって儲けを得ている傭兵や娼婦達からは憎まれ、また「同業者」である魔女達からも疎まれる。さらに、魔女の存在を認めないカトリック教会、そして地上の理を守ろうとする天界の天使達からも、マリアの自分本位な行動は警戒されていた。
領主の侍従である青年ジョセフ(演: 小野賢章)は、矢文を携えてよくマリアの家を訪れていた。ある時ジョセフは、領主の命により、もうすぐ自分も兵士として戦場に行くことになると話す。マリアは特別な関心を見せないが、内心では自分のことを怖れずに近づいてくる、純朴な男性の存在にドギマギしていた。マリアには、魔女というイメージに反して、本当は「処女」であるという、誰にも知られたくない秘密があった――。

〈↓ネタバレあり Spoiler Alert!↓〉
・アニメ『純潔のマリア』

レビュー


 

割と現代寄り?

幼い頃、ニュースや新聞を眺めながら、ごくごく純粋な疑問として、こんな風に思った記憶があります。
「なんで世界から戦争は無くならないの?」
たぶん、子供の時なら誰しも一度や二度くらい、こう思うものなんじゃないでしょうか。

主人公マリアは、そんな子供の疑問そのまんまを動機として突っ走ってると言えます。
本当は大人になったら、色々な現実を知るにつれて、子供時代に思った理想からは遠ざかっていく。でも、マリアは自分の持っている理想を意地でも守ろうとしています。この作品では、その様子が女性としての「純潔」に重ねあわされています。
魔女だけど、純潔を守りたい。人々から恐れられるけど、人々を助けたい。現実を受け入れないといけないけど、理想は捨てたくない。
この作品はこの辺りのジレンマが、設定として色々と上手くはまってると感じました。光と影の二つのイメージを合わせ持つ魔女という存在を主役にしている意義が、この辺に来ています。

あと、1話から観てて思ったのは、戦争に参加させられる人達の事情がリアルに描かれてるということです。アニメでは、戦争が簡単には無くならない理由として、戦争によって生計を立てている人々の存在が挙げられています。傭兵達です。
私は正直世界史に疎いので、中世ヨーロッパを描いてる作品といったら騎士道とかのイメージしか無かったのですが、この作品の視点は思い切り庶民的です。
大義を持たず、生活や金儲けのためだけに戦場に出続ける人々。忠誠心とか愛国心ではなく、利益のための人殺し。(実際には、金になると分かれば捕虜にする方を優先してましたが。)何ていうか、中世の百年戦争を見てるはずなのに、例えば、現代のイラク戦争で幅を利かせたPMC(民間軍事企業)の原型を見てるかのような気にさえなりました。
そういうわけで、私にはこの作品のテーマの描き方が、ちょっと現代を意識しているように感じられます。経済活動としての戦争。お国や宗教のためというより、生計のために行く戦場。舞台は中世だけど、今の時代でやるからには今の時代の問題を踏まえているという感じ。

「大人になって」受け入れるもの

平和な状態ではむしろ生きられないという人々の存在が、マリアを悩ませます。そして、天上の教会は、それも含めて戦争状態を「人の世の理」と言っています。それは誰も変えてはいけないものだと警告します。
しかし、マリアには、それが冷めた大人の諦めのようにしか聞こえません。だから、子供なりの理想と、大人の現実観がぶつかり合います。キャラ的にも感情を包み隠さないマリアと、機械的に喋るミカエルとが、子供対大人のように対比されてます。

で、最終的にその対立にどう決着がつくのか、というのが焦点なわけですが。
最後にマリアはジョセフと結ばれます。エゼキエルが将来二人の間の子になるということは、いつかマリアは処女は捨てるということになります。なら彼女は魔法を捨てて平和を諦めたかというと、そうでもありません。
たぶん、この決断で大事なのは、「純潔を捨てること」より、「他者を受け入れたこと」の方ですよね。だから、魔法が使えなくなるということは、実はもう重要ではなくなっていて、マリアが新しい見方で世界を見ることができるようになったことの方が大事です。
マリアは「(自分のやり方で)戦争を無くすという思い」を、大人に汚されないようにするために、かたくなに他者を拒絶していましたが、言い換えると、他の価値観を認める余地がありません。
しかし、彼女の大嫌いな戦場の中で、彼女のことを想って戦っている人がいることに気付いた時、それがちょっと変わるのです。その時から、彼女は独りではなくなって、子供らしい気持ちも脱して、他者と一緒に何かできることに気付きます。
それは、戦いを無くすっていう最初の理想と全然両立するんですよね。ただ今までの”孤独”で”子供っぽい”やり方(他者を無理やりねじ伏せる)じゃなくて、そこから一歩進んだやり方を考えられるようになったということ。
たぶんそれって、良い形で人が「大人」に成長できたということですよね。

「子供のままじゃ戦争は解決できない」っていう目線は、シビアだし現実的ではあります。
でも、昔の純真な理想を失わずに大人になることだってできると思う方が、きっと良いんです。魔法を手放したマリアとジョセフのように。

レビュー

中世事情

この作品、どうやら歴史考証がかなり本格的らしい、のですが、その辺りは公式サイトにある「なぜなに中世事情」(http://junketsu-maria.tv/special/nazenani_01-02.php)が凄い面白いし、ためになります。読み物として良いです。アニメだと映像では表現されていても、言葉による説明が無い描写とかが、このコーナーでフォローされてます。
一番へぇ~ってなったのが、第10話でジルベールがマリアに、洗礼を受けたかどうか尋ねるシーンの意味。

異端とはキリスト教の正当な信仰とは違う間違った教えを信じていることであり、あくまでキリスト教徒であることが前提でなければならないからである。そもそもキリスト教徒でないならば、異端ではなく異教徒(もしくは無神論者)ということになる。つまり、洗礼を受けたかどうかが、キリスト教かどうかの判断基準だったのだ。
――http://junketsu-maria.tv/special/nazenani.php

だそうです。
「あの何気ない映像にこういう意味があったのか!」ってなる作品って、やっぱり良いですよね。

戦争描写

中世式の戦闘術とかも色々見られて面白かったです。馬を防ぐための杭とか。弓から火薬へ、という武器の変化。最初に傭兵や平民を行かせて、後から騎馬隊で一気に掃討したり。
ちょっと欲を言えば、もっと凄惨な描写があっても良い気がしました。ほら、首が刎ね飛んだりとか。
何と言うか、普段あれだけギリギリの下ネタをやってるのに、戦場の描写は何だかちょっとセーブ気味な気がして……。もう現状で十分グロいわ!っていう人もいるかもしれませんが。

ファンタジーとは終わるもの

ケルヌンノスは序盤から登場していて、一番ラスボス臭があったんですが(CV:土師孝也だし)、結局裏方的な立ち位置でした。でも、彼の台詞の内容って、ファンタジージャンルとしてのこの作品にとっては大事だと思います。
ケルヌンノスを始め、あの世界ではかつての神話的存在、ファンタジックなもの達が、だんだんと忘れられていっています。魔女であるマリアらも、いずれは人々の記憶から消える存在だと。
でも、ファンタジー世界が人々の前から姿を消していくのって、私が考えるファンタジーの王道だと思うんですよね。ファンタジックなもの達は、今の時代にはいないからファンタジックなのであって、本当はそれらがなぜ今の世界にいないのかということまで含めて、ファンタジーなんです。
あの『指輪物語』の後日談でも、エルフとかドワーフといった種族達が、だんだんと世界から去っていって、最後に人間だけが残り、今に至ります。

だから、このアニメもそんなファンタジーの王道を意識してると思って、そこが好きだなぁと思います。持論ですけど、やっぱりファンタジーって、最後にいかに現実に繋がってくるかが肝心ですよね。

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カテゴリー: かんたん感想, かんたん感想 -アニメ

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