映画『ホビット 決戦のゆくえ』を観てきた (かんたん感想)

今年も色々な映画を観ることができましたが、2014年の映画納めはこの作品にしようと、前から決めておりました。というわけで、『ホビット』です! 公式サイト:http://www.hobbitmovie.jp

イントロダクション

『思いがけない冒険』(2012年)、『竜に奪われた王国』(2013)から続く、J・R・R・トールキンの児童書を原作とした『ホビット』三部作の最終章。原作のクライマックスにあたる「五軍の合戦」の様子を中心に描いています。 監督ピーター・ジャクソンは、『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)から始めた、壮大な中つ国サーガをこれで完結させます。
キャスト陣は前作から引き続き、ホビット族のビルボを演じるマーティン・フリーマン、魔法使いガンダルフ役のイアン・マッケランを始め、リチャード・アーミティッジオーランド・ブルームエヴァンジェリン・リリールーク・エヴァンズらが登場。多すぎて書ききれないのですが。個人的には、私の好きなガラドリエル様(←なぜか様付けになる)役のケイト・ブランシェットの再びの出演が嬉しい! 見せ場もありますよ!
ニュージーランドでの公開が2014年12月11日、日本での公開がその2日後の13日となっています。

あらすじ

前作『竜に奪われた王国』のエンディングの直後。ホビット族のビルボ(演: マーティン・フリーマン)とドワーフ族のトーリン(演: リチャード・アーミティッジ)らは、ドワーフの王国エレボールに巣食っていた竜・スマウグ(演: ベネディクト・カンバーバッチ)を倒すことに失敗。スマウグはその復讐として、湖の町エスガロスを襲撃し始める。
住民の人間達は、巨大な竜の炎から成す術もなく逃げ惑うが、町の統領によって囚われていた射手・バルド(演: ルーク・エヴァンズ)は、その混乱の最中に脱出し、スマウグを倒すためにただ一人弓を取った。どの矢でも竜の鱗を傷付けることができず、スマウグに狙われて絶体絶命かと思われたその時、バルドの息子が「黒い矢」を持って駆け付けた。バルドはその矢を、かつて祖先のギリオンが作った、スマウグ唯一の傷痕に向かって放ち、見事に命中させ、竜を倒すことに成功する。
一方、トーリンは、エレボールの王権の証である「アーケン石」を、財宝の山の中から見つけ出そうと必死になっていた。実はその石は既にビルボが発見していたものの、彼は石に異様な執着を見せるトーリンのことを案じ、それを隠していた。スマウグの襲撃を生き残ったエスガロスの人間達は、バルドに率いられ、はなれ山の側にあるデイルの町の廃墟に移住する。トーリンは、人間達が財宝を狙いに来たと警戒し、城の守りを固め始める。
やがて、エルフ王スランドゥイル(演: リー・ペイス)と、その軍勢もデイルに到着。スランドゥイルは山の白い宝玉を、バルドは湖の町が受けた被害の贖いを、それぞれトーリンに求める。しかし、トーリンは全く話に応じない。エルフ・人間側とドワーフ側は、一触即発の状態となるが、その頃、灰色の魔法使いガンダルフ(演: イアン・マッケラン)は、両者にとって共通の大きな脅威が迫っていることを警告しようとしていた――。

〈↓ネタバレあり Spoiler Alert!↓〉
・映画『ホビット 思いがけない冒険』
・映画『ホビット 竜に奪われた王国』
・映画『ホビット 決戦のゆくえ』

レビュー

見せ場の連続で忙しい

三部作の最終作ということで、この作品単体での評価もできますし、三部作全体、あるいは『ロード・オブ・ザ・リング』を含めた「六部作」全体としての評価も可能なのですが、とりあえずは単体から。
前作がまさにクリフハンガー的な終わり方で、多くの人物の運命が宙吊りになったまま、この最終章に突入しました。 そして、やはり序盤からそれらの回収に忙しかったです。 まずは竜との対決。原作は既読でどういう展開になるか知っていたので、スマウグは映画開始から8分以内には死ぬだろうと予想していたのですが、まさかサブタイトルよりも前に死ぬとは……。それでも、すぐには撃たれずに、バルドと対峙して前作同様の威圧感を見せてくれたのが良かったです。そう簡単にバルドに黒い矢を撃たせないのも、良いスリルだったと思います。
続いて、白の会議の決戦。これが見たかったんです! 闘うガラドリエル様、エルロンド、そしてサルマン。この展開は一種のファンサービスのようなものです。原作では派手な大立ち周りを演じることのない彼らでも、映画でなら可能というわけです。その是非はともかくとして、とても燃える演出になっていたのは間違いありません。一撃でガラドリエルがドル・グルドゥアにかかる呪いを破った後は、エルロンド卿・サルマンが、ナズグール達とスピード感溢れるバトルを繰り広げます。そしてそして、ついにサウロンの登場。ガラドリエル様がネンヤ(と玻璃瓶?)をかざして、光と闇の激突。非常に目がチカチカします……。
それらと並行して、エレボールの様子が描かれます。トーリンは、エレボールの奪還という当初の目的を達成すると、次第にその心は財宝の独占で一杯になります。原作よりもはっきりとその執着が強調されているかのようです。スマウグと一言一句同じセリフを喋らせるというのは、それを示す単純に良いアイデアだと思いました。黄金に引き寄せられる者が、同じ道を走ろうとしています。

このように、序盤からずっと駆け足の展開が続き、それから流れるように合戦に繋がります。ホビット庄で始まった小さくて密かな冒険は、いつの間にか中つ国を揺るがす大きな事件に発展します。
そんなあまりに大きな運命の流れの中で、鍵を握っているのが、素朴な心を持ったホビット族のビルボです。
よくよく考えれば、彼は「一つの指輪」と「アーケン石」という、中つ国のとんでもない2大アイテムを一人で所持していながら、それらの真の価値に気付いていません。うねるように展開する物語でも、小さな彼の存在だけは変わらないということが、観る人に一種の安心感を与えてくれます。
これが「ビルボの物語」「ゆきて帰りし物語」であることが見失われていない点は、とても大事だと思います。たとえどれだけ派手な見せ場があったとしても、結局はそこが芯なのです。
前作までに作られてきた、多くのキャラの因縁も最後には解決され、そして『旅の仲間』に繋がる布石もしっかり用意されて、最終作としてはとても順当な終わり方だったと思います。 もちろん、もっと見たかった点や疑問に思った点などが無いではないですが……(詳しくは後述)。
それでも、どういう形であろうと、これが映像上での中つ国とのお別れ(farewell)になるのが、何とも切なさを残しました。

まだ夢の深かった頃

『ホビット』三部作全体を見ると、前作『ロード・オブ・ザ・リング』三部作に比べて、より映像に躍動感というか、陽気さが増えているように、私は感じました。
『ロード~』にそれらが無かったわけではなくて、あくまで相対的な話なのですが、それでも、見た目に派手なアクションとか、魔法が登場する場面が多かったように思えます。
それは、児童書である原作の雰囲気を反映したせいかもしれませんし、あるいはCGが発達したり、3D映像で映えるようにしたせいかもしれません。

でも、一つちょっと考えたくなるのが、『ホビット』では『ロード~』に比べて、エルフとドワーフという、人間以外の種族の活躍の場が大きいことです。
『ロード~』での旅の仲間の構成は、アラゴルン・ボロミアという人間に、フロド・サム・メリー・ピピンというホビット(人間の一種族)で、6人を占めています。エルフはレゴラス1人、ドワーフもギムリ1人です。ガンダルフは見た目こそ人間ですが、彼は西方から派遣されたイスタリという種族であって、人間の肉体をまとっているだけです(詳しい説明はwikiとか参照)。
また、物語が進むにつれて、ロスローリエンや裂け谷のようなエルフの地の影は薄くなり(ドワーフのモリアにいたっては既に壊滅している)、むしろローハン、ゴンドールという人間の国の動向に焦点が当たるようになります。(これら自由の国がモルドールの支配下に落ちてしまうと、中つ国の運命が決してしまうため、それらを防衛しなければなりません。)
というように、『ロード・オブ・ザ・リング』(『指輪物語』)は、人間の目覚めをテーマの一つとして描く物語です。冥王サウロンを倒した人間イシルドゥアが、指輪の魔力に堕落してしまってから約3000年後、その正統な世継ぎであるアラゴルンが王に即位することで、ようやく人間が世界の運命を切り開く主体としての地位を獲得できたのです。

これに対し、『ホビット』ではドワーフやエルフという、人間以外の種族の活躍の場面が多くなっています。(中つ国の歴史的に、人間より先に生まれた者達。)
エレボール遠征隊には、ビルボとガンダルフ以外は当然ドワーフばかり。また、道中では、裂け谷、ビヨルン邸、闇の森のエルフの王国に訪れます。
映画『思いがけない冒険』での特筆すべき演出として、裂け谷の季節感があります。『ロード~』では、中つ国におけるエルフの時代の終焉を暗示するように、裂け谷は秋めいて見えます。
一方で、その約60年前にあたる『思いがけない冒険』では、まだそういう気配は無く、緑の多さが感じられます。これは意図的な演出のようです。

もちろん、『ホビット』では人間の住む湖の町に立ち寄ります。そして、竜のスマウグを倒してしまうのが、ドワーフではなくて人間のバルドであるという事実は注目すべきです。
それでも、『ホビット』の人間以外の種族には、『ロード~』の時にうっすらと感じられた「陰り」のようなものは、ほとんど見て取れません。あるいは、過ぎ去った栄光を懐かしみ、いつか来る終わりを悲しむ「寂しさ」も。
ただの考え過ぎであることも、しかも後知恵的な考え方であることも承知してます。が、『ホビット』を観ていると、私達人間には無い能力、人間には作れないもの、人間には思いもよらないものの印象がより強く残ります。前述した躍動感の正体は、個人的にはそれらかもしれません。

『ロード・オブ・ザ・リング』が私達に「目覚め」を見せてくれたのだとしたら、『ホビット』はまだ「眠りの深い頃の夢」を見せてくれたのだと思ってます。 なぜ私達がわざわざその夢を見に行くのかといえば、それは『ロード~』でその話を聞いて以来、ずっと気になっていたからです。夢は『ホビット』から(さらにそのずっと前から)始まっていたのです。私達はその夢を見たいと思って、この『ホビット』を観るのです。
だから、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作も、『ホビット』三部作も、どちらもそれら単体では完全にはならないのではと思います。

雑感

疑問点

さて、『決戦のゆくえ』に限った話ですが、観ていてちょっと「?」と思ったところを。

  • レゴラス達がグンダバドに行くくだりは必要だったのか
    微妙なのですが、レゴラスとタウリエル二人が旅立った割には、すぐにデイルに戻ってくることになって、ちょっと肩すかし感がありました。あそこでアクションの一つでもあるのかと思ったのですが。もっと言えば、前作でボルグを追跡して出番の終わったレゴラスですが、そのまま追い続けてればもっとこの展開は合理化できたのでは、とも思ったり。なぜ彼は湖に戻ってきたのでしょう……。
    確かに「グンダバドからさらに軍勢が来る!」という警告はガンダルフ達に知らせなければならないのですが、でも、もっと上手い展開があったのかもしれません。
  • 白の会議はあの後どうなったのか
    サルマンが自信ありげに「サウロンは私に任されよ」と言ってあのパートは終わりました。あれはもちろんその後の『ロード・オブ・ザ・リング』での展開への布石になってはいるのですが、なんだかあのエルロンドらの会話の調子だと、まだこの『決戦のゆくえ』内でももう一つ出番があるのでは?という気にさせられて、消化不良感が出ます……。最後に顔出しくらいは欲しかったです。
  • アーケン石は最後どうなったのか
    原作では、埋葬されたトーリンの遺体の上にアーケン石が安置されることになるのですが、その埋葬のくだりは全く映画では登場しません……。このシーンがあって、ようやくスランドゥイルやバルドと、ドワーフ達との和解が表現できると思ったのですが。全く最後「石のゆくえ」がうやむやになってしまうのは……。というわけで、エクステンデッド・エディションに期待いたします。
  • ビヨルンやラダガストらはどうなったか
    決戦シーンには登場していましたが、最後の旅にも顔を出して欲しかったですね。これも例によってエクステンデッド・エディションに期待。(それにしても、エクステンデッドが免罪符になってる感……。)

前作のフラッシュバック

特に今回は観ていて、前作と似た構図が生かされていると思った点がいくつかありました。トーリンの声音がスマウグに似るは分かりやすいですが、もっと映像的な点で。

  • ドワーフを踏み台に
    開戦シーンです。突撃してくるオーク軍に対し、ドワーフのダイン軍が盾と槍を固めて陣形を組みます。エルフ軍は戦いに加わるのか……?と思わせた瞬間、盾の壁の向こうから華麗にエルフの槍兵が飛び上がってきます。これが壮観でした。
    で、よくは見えなかったのですが、たぶんこの時、ドワーフを踏んづけてジャンプしてると思ったんですよね。もしそうだとすれば、前作の川下りでレゴラスがやったあの行為がここに繋がってきてるのだと思います。
  • レゴラスがオルクリストを投げる
    こちらはより分かりやすくて、前作でレゴラスがオークに背後を取られそうになった時、とっさにトーリンが敵へ剣を投げて、窮地を救っています。そのお返しなのか、トーリンが襲われている時に、矢の切れたレゴラスはオルクリストを投げ飛ばしてオークを殺し、同時にトーリンに武器を与えています。この言葉によらないやり取り、良いと思います。
  • レゴラスの刃を掴んで止めるボルグ
    前作でレゴラスとボルグが一騎打ちをしていますが、そこでボルグがオルクリストを掴んで受け止める、印象的なカットがありました。その後レゴラスは劣勢に立たされます。(何となくアラゴルン対ラーツのラストを連想させる。)
    で、今回もレゴラスの短剣をほぼ同じように掴むシーンがありました。が、今回はレゴラスは同じ失敗は繰り返さなかったようですね。

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