映画『インターステラー』を観てきた (かんたん感想)



公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/interstellar/

イントロダクション

クリストファー・ノーラン監督による、169分のSF超大作。
製作や宣伝が秘密主義的で、なかなか内容に関する情報が見えてこなかったのを覚えています。死にかけた地球を脱して新天地を探しに行く物語だとは聞いていましたが……。

ノーラン作品らしく、スタッフ陣もだいたいいつもの顔ぶれです。脚本(ジョナサン・ノーラン)とか音楽(ハンス・ジマー)とか。撮影監督は、『トランセンデンス』(感想記事はこちら)を撮っていたウォーリー・フィスターに代わって、ホイテ・ヴァン・ホイテマ(個人的に好きな映画『裏切りのサーカス』などの撮影監督)が担当したそうですが。また、製作総指揮に、理論物理学者のキップ・ソーンを迎えたことでも話題になったそうです。

死に絶えていく地球に家族を残し、重大なミッションに挑む宇宙飛行士の主人公役に、マシュー・マコノヒー。彼と共に宇宙船に搭乗する科学者役に、『ダークナイト・ライジング』のキャットウーマン役が記憶に新しいアン・ハサウェイ
また、マイケル・ケインのようなノーラン作品常連のキャストがいる一方で、ジェシカ・チャステインケイシー・アフレックマット・デイモンなどの新たな役者陣もしっかりと物語を支えています。予告編でほぼ姿を見せていないのは、どうしても物語の性質上、ネタバレになるからでしょうね……。

アメリカでの公開は、2014年11月7日。日本では、同年11月22日に封切り。

あらすじ

かつてNASAの優秀なパイロットだったクーパー(演: マシュー・マコノヒー)は、墜落事故をきっかけに事実上の引退をし、愛する娘のマーフ(演: マッケンジー・フォイ)と息子トム(演: ティモシー・シャラメ)を育て、義父とともにトウモロコシ農場を経営していた。
地球の環境異変により、各地では砂嵐などの異常気象が起き、疫病で植物は死滅していった。クーパーの近所の作物も育たなくなり、彼の家族、そして人類全体は、確実に滅びに向かいつつあった。
マーフは、自分の部屋の本棚にあるものが、時々独りでに落ちる現象に気付き、幽霊の仕業だと言うが、一方でそれを記録し法則を見出そうとしていた。クーパーの周りではその後も、無人機の不可解な動作などが相次ぐ。砂嵐が起きたある日、マーフは自室の窓を閉め忘れて、部屋に大量の砂が入り込んでいた。クーパーは、床に溜まった砂の上に奇妙な模様が出来ていることに気づく。
彼はそれがある座標を示していると推測し、ついてきたマーフと共にその地点に向かう。怪しげな場所に辿り着いた二人は何者かに拘束されるが、そこがかつて解散したはずのNASAの基地であることを知る。
クーパーは、NASA時代の同僚ブランド教授(演: マイケル・ケイン)らに迎えられ、NASAが極秘に復活したのは、第二の地球を見つけるためだと説明される。太陽系に人類が居住可能な星は無いが、土星の付近に、数十年前に「何者か」によって作られたワームホールが出現しており、そこは別の銀河へと通じていた。既に3つの先遣隊がそこを通り、それぞれが有力な第二の地球候補の惑星を見つけたと信号を送ってきている。
教授はクーパーに、先遣隊と接触し、第二の地球に行くミッションに参加してほしいと説得する。それは、気の遠くなるような時間――あるいは永久に――クーパーと家族が離れ離れになることを意味していた。マーフは激しく拒絶し、本棚が表すメッセージは”S.T.A.Y.”(留まれ)だと教えるが、クーパーは参加を決意。自分の腕時計と同じ時間に合わせた別の腕時計を娘に託して、クーパーはブランド教授の娘アメリア(演: アン・ハサウェイ)らと共に、宇宙へと旅立つ――。

〈↓ネタバレあり Spoiler Alert!↓〉
・映画『インターステラー』

レビュー

先を読ませない

「この映画は、(物理学を基にした)宇宙アドベンチャーものだ」というような先入観を持って、多くの観客が映画館に入ったと思いますし、私もその一人でした。
ところが、そういう人は序盤のシーンで出鼻をくじかれます。マーフが「幽霊」、「ポルターガイスト」などの話をしだすのです。しかも、それはどうやら気のせいでも無い。何らかの得体の知れない力が、主人公の娘の部屋というかなりパーソナルな空間に影響を及ぼしています。しかし、それは私達の多くがイメージする科学と一見まるで結びつかないような現象です。
これ宇宙の映画だよね……? これがこの後どう話に繋がってくるの……? と疑問になってきますが、クーパーが宇宙に旅立つことになってからは、それも一旦うやむやになります。

この部分も含めて、この作品のプロットはなかなか先を読ませません。振り返ってみれば、意外と分かりやすい構造であるにも関わらず。
旅の根本原理であったブランド博士の理論の嘘が死の間際に告白され、いかにも善人顔をしていたマット・デイモンのマン博士がいきなり仲間を裏切ります。その上、ワームホール、第二の地球候補の惑星、そしてブラックホールなど、そこに行ったら何が起きるか分からない、という展開が次々とやってきます。

といっても、この作品のストーリーそのものが「未知」への挑戦なので、それも不思議ではないかもしれません。先に何が待ち受けているか予想できてしまったら、それは未知ではありませんし、興奮もありません。

「未知」に挑むこと

巨大ブラックホール「ガルガンチュア」の事象の地平線を越えた先、五次元宇宙のパートが、まさにこの作品のクライマックスです。
あそこで、それまでにあった全てがひっくり返されます。作品の性質さえ一変しかけたように見えます。同時に、クーパーにとって数十年前の出来事が、観客にとっては約2時間前の出来事が、一気に蘇って繋がりを持ち始めます。
ここの予想を超える展開をどう感じたかで、作品全体への好き嫌いが変わってくるかもしれません。私自身は、「序盤のアレをこう繋げるか!」と、もう興奮やら当惑やら何やらで劇場の暗闇の中ニヤついてました(両隣に客いたけど)。
でもともかく、このシーンで、私はこの作品のやりたかったことをやっと確信できたと思いました。

つまり、この作品の魅力は映像です。
厳密に言えば、まだ誰も見たことのない「未知」を映像で描くことです。
未だかつて、球体状の鏡のようなワームホールや、煌々と光り輝くブラックホールなんて、映画で見たことがありませんでした。あるいは、山のように見える波も、空で凍り付いた雲海も、そして無限に同じ立方体が続く空間も。
それに、純粋に興奮させられるんです。これでもかとばかりに、スクリーン一杯に広がる宇宙の神秘に、圧倒させられるんです。

この映画でいう「未知」とは、「時間を越えた先にあるもの」です。
『インセプション』が、人間の意識が知覚する時間の不思議さを描いていたとしたら、この『インターステラー』は、誰にでも共通の物理的な現象としての時間の不思議さを描いています。宇宙船エンデュアランスの、円形に連なる12個のポッドや、クーパー親子を繋ぐ腕時計なども象徴するように、時間は、この映画の中心概念です。
三次元に生きて、寿命のある人間には、宇宙の全てを見ることはできません。自分ができるあらゆることに、限りが付いています。
その限りを越えられた先に何があるかを、知ることはできません。2014年現在、人類はワームホールを通っていませんし、ブラックホールの中を垣間見たこともありません。(モノリスの内部に入った人間ならいるかもしれませんが……)
なので、その先に何があるのかをぴたりと言い当てることができる人は、まだ誰もいません。しかし言い換えれば、その先にはあらゆる可能性が待っています。マーフィーの法則じゃありませんが、「起こりうることは起こる」んです。

なぜわざわざ「未知」を知りたい・描きたいと思うの? それは、人間にとって根源的でシンプルな探究心や、パイオニア精神じゃないでしょうか。クーパーは教師との面談で、人々が「未知」への探究心を失いつつあることを嘆いています。彼は生粋の冒険家、探索者です。目の前のことで一杯一杯になっている時にこそ、彼は宇宙を見上げます。

クーパー同様、この作品そのものを動機付けているのも、やはり探究心だと思います。
単純に私はそれに共感したし、その気概を買いたいです。映像によって興奮を覚えさせてくれることに。最近の映画が、確実に収益を上げられる続編ものやリメイク・リブートものばかりになる中で、未知なるオリジナル作に挑戦してくれたことに。
親子愛を軸にした王道の筋書きも、ちょっと陳腐とも見られかねない種明かしも、その目的に沿った上のものじゃないでしょうか。

見えないものを描く

「未知」とはまだ誰にも見えないものなので、それがどんな姿をしているかは誰も教えてはくれません。どんな姿か分からなかったら、映像で描くことはできません。
でも、もし文芸の醍醐味の一つが、「文字で表現できないものを文字で表現すること」だとしたら、映画の醍醐味の一つは、「映像で表現できないものを映像で表現すること」でしょう。
『インターステラー』はそれを地で行っています。
そして、その方便として、重力方程式やらワームホール理論やらブラックホール理論、そして高次元世界があるわけです。
別に「映像で表現できないもの」を描くのに、必ずしもこれらの知識が要るわけではありません。
でも、何か描きたいものを描き出すために、ちょこっと科学の力を借りてくる。これぞまっとうなSFじゃないでしょうか。

ワームホールなんて、五次元世界なんて、時の流れなんて、「愛の力」なんて、映像では映し出せません。だからこそ、映画ではそれらを映像で表現しなければなりません。

CASE: 「これは不可能だ」 (It’s not possible.)
クーパー: 「だが、必要だ」 (No. It’s necessary.)

こんなやり取りを思い出してしまいますが。

映画は、まだまだ私達に未知なるものを見せてくれる。そんな純粋な楽しさや興奮を思い出させてくれるような、心震える映像体験でした。何だかんだ言われても、やっぱりノーラン監督って、凄いと思います。
観て良かった!

雑感

『2001年宇宙の旅』へのオマージュポイント

〈↓ネタバレあり Spoiler Alert!↓〉
・映画&小説『2001年宇宙の旅』

色々なところで『2001年~』とこの作品との関連が語られていますが、自分なりにここが似ているなぁと思ったところを。

  • 土星の近くにワームホール
    『2001年~』の小説版でのディスカバリー号の最終目的地は、土星なんです。ワームホールが独りでに出現したのではなく、「彼ら」の意図によるものだという話が序盤のNASAのシーンで出てきた時、それも思い出してニヤリとしてました。
  • 乗組員にAIがいる
    萌えキャラとの呼び声も高いT.A.R.S.君ら。まさか冷凍睡眠中の乗組員を殺したりするようなことはしませんが、やはりクルーが人間ばかりではないのが面白いです。喋り方が本物の人間のようにこなれているというのも良いですね。今時HAL9000のような喋り方されても困りますし。
  • 乗組員に情報が隠されている
    『2001年~』では、ミッションについて、ボーマン船長らには知らされていないことがありました(HAL9000は知っている)。『インターステラー』では、ミッションはそもそもプランBが本命であったことが明らかにされ、クーパーらを動揺させます(マン博士は最初から知っていた)。
  • 宇宙で異空間を通り抜けた先に、地球上の光景が出現する
    ここに一番強くオマージュを感じたかもしれません。『インターステラー』の方では、娘の部屋の謎という伏線を回収することになっていますが。

何というか、ラストでもクーパーが人間体のままで良かったとホッとしたのは、私だけでしょうかね。

時間の凝縮

観ていて一番心に堪えたシーンは、水の惑星からエンデュアランスに帰還した後のシーンですね。
あれだけ短い間に時間の重みを叩きつけてくる展開なんてそうそう無いと思いました。
いや、地球上にいたら、息子が成長して、彼女ができて、結婚したことを喜んで、孫が産まれたことを祝って、そしてすぐに死んだことを悲しんで……、という人生の出来事を、同じ時間の速さで共有していったはずなんですよ。その23年分の喜びと悲しみを、ほんの3分以下に凝縮して一気に味わわなければいけないなんて、普通の人間には想像もつきません。
自分は映画を観ても泣かないんですけど(表情に出ないだけで内側でしっかり感動してる)、もう一度あのシーン見たらちょっと堪えられるか分かりません……。

マン博士について

マット・デイモンの出演は公開ギリギリまで伏せられたみたいですが、なかなか印象的な役どころでしたね。
劇中では悪役的行為をしていますが、この作品に本当の意味での悪役は誰もいないので、彼はあくまで、どこまでも人間臭い人間だったんだと、私は解釈しています。
また、Youtubeで見かけたコメントで、彼は「ありえたかもしれないもう一人のクーパーの姿」だと解釈していて、それにも納得しましたね。そうすると、博士が冷凍睡眠から目覚めた直後の反応がより皮肉的です。

サントラについて

とても上から目線な言い方に聞こえて申し訳ないのですが、正直この映画を観る前、「ハンス・ジマーの音楽も、聴いてすぐにそれと分かるようになってきたなぁ」なんて思ってたんですよ。
それだけ膨大な数の作品で劇半を手がけていることでもあるんですが。ただ、上手くは言えませんが、何となく彼の音楽に「パターン」を感じてたんです。使う楽器とか、曲の展開とか。
で、今回の『インターステラー』ですが……、謝りたい気持ちになりました。完全に惚れました!今までの音楽に全く無い新しさがあります!
メインテーマのメロディが優しくて、泣けてくるんです。また、ワームホールへ突入する前の不安を煽る音も良いですし、後半の回転ドッキングシーンのパイプオルガンとか、神がかってました。映画のテーマが「時間」であることも理解していて、「チクタク」という時計の針の急き立てるような音を入れる趣向も好きです。
まだまだこの人には、ノーラン監督とタッグを続けて欲しいですね。

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2件のコメント

カテゴリー: かんたん感想, かんたん感想 -映画

映画『インターステラー』を観てきた (かんたん感想)」への2件のフィードバック

  1. cokumico

    ノーランすごいですよねっ!確かに、音楽新しい感じしますよね!!

    • コメントありがとうございます。

      良いですよね~、『インターステラー』。ノーラン作品の中でも、これは特にお気に入りの一本になりそうです。
      音楽も最近頭から離れないので、サントラも買ってしまおうかと思ってます。

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