[小説] 夜空の寿命 (※8/22時点未完、約1000字)

Twitter#深夜の真剣文字書き60分一本勝負企画 参加作品
お題:「星」

 望遠鏡の暗闇の中に、ふいにまた一つ輝きを見つけると、童心に返ったように喜んでしまう。ろうそくの上で、最後にほんの小さな粒と化した火のような、滲んだ赤色。でも、まだこの星は生き残っているようだった。僕は観測のデータが電子的にしっかり記録されたのを確かめると、今度は回転椅子の向きを変えて、右隣りの机の上に置かれた紙に、同じデータを書き込み始める。あらゆる情報の予備を保存するべし、それも非電子的に、とはいつから定着した常識だったか。一世紀前に太陽が地球上にもたらした災いに懲りた時からか。とにかくそれは意味があることだった。デジタルと紙のどちらが長く生き残れるのか、誰にも分からないからだ。
 彼女が部屋のドアを開けて入ってくる。今僕のやっているような手作業は彼女に任せてもいいし、実際そうやって作業を分担してきたものだったけれど、彼女は階下でお茶を入れてきたのだった。人工茶葉のお茶だ。十分に濾過されて有害物質がすっかり除かれた水でできている。そういえば今度濾過装置は掃除しないといけない。
「まだ消えてないんだね。良かった」
 彼女が、僕が記録している星の名前を見て言った。
「少なくともあと一年は大丈夫なんじゃないかな」僕は見積もった。もちろん、天体に関してははっきりと予測を立てることは難しくなっている。
 ペンを置いて、机の上に置いてくれたお茶を少し飲む。燃料を節約しているからぬるいけれど、これぐらいがちょうどいい。彼女も別の椅子に座って飲んでいた。
「今夜はいくつ?」
「四百二十二。今のところは」
「先週よりまた一個減ったね」
 僕は返事をせずに、また望遠鏡を覗く。深さの分からない黒色が広がっている。地上の天体観測者の仕事は、かつての時代のそれとはもはや変わってしまった。暗闇に目を走らせて、夜空の寿命を記録し続ける仕事。まだ残っているもの、数万光年先で消えていたものを探す。それを記録する。
 彼女は毛布に身を包んで、ため息をついた。「半年後のあれのことだけどさ」そう切り出したが、僕はできればその話題はやめたかった。
「行く気は無い?」
 夜空は音を出さないので静かだった。目の前のレンズの奥には、相変わらず黒が広がっている。
「半年後じゃなくても良いだろ」僕はやっと答えたが、反応が怖くなった。
「いつまで続けるつもり?」
 今夜は何でこんなことを聞いてくるんだ。
「星がある間は」
「私達が死ぬよりは早く消えると思う」
 それは僕も感じている予感だった。今、夜空は死んでいっている。黒に呑まれていっている。

[未完です。後日別記事として再投稿します。]

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カテゴリー: 創作小説

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