『Fingers in the Factories』レビュー -アルバム『The Back Room』 各論編

例によってアルバム『The Back Room』から。7曲目、『Fingers in the Factories』について語らせていただきますよ。

ライナーノーツ的解説

“Come on out tonight come and see the sight
Of the ones you love and the ones in love,
When you
Keep with me
Keep with me
Keep with me
Keep with me”
(今夜出ておいでよ そして見においでよ
君が愛している人達の姿と 恋している人達の姿を
そのときは
僕に付き合ってくれ)

アルバム後半の重要な曲の一つ。このアルバムの白眉を決めるなら私はこれを推します。
ライブでは、セットリストのラストにこの曲が持ってこられることが多かったようです。きっとそれは、文句なしに盛り上がって終われるナンバーだからでしょう。Editorsの曲の中でも、最高の高揚感をもたらしてくれる曲の一つだと私は思います。

イントロから一目惚れならぬ一聴き惚れしました。
リードギターとドラムに始まり、徐々にリズムギターとベースが加わっていき、スピードをつけて駆け上がっていく様子がたまりません。聴き手の期待を呼ぶイントロです。

特にこの曲では全体的にリズムギターが光っている気がします。Aメロディでは裏でしっかりと、広がりを感じさせるサウンドを聴かせてくれてます。
一方で歌詞を見てみると、“You’re the night the dirty night”というフレーズが不穏な存在感を持っています。“Keep us in our place”と、直後の“keeps us going”は一見すると矛盾しているように見えます。「留まらせ続ける」のに「駆り立て続ける」のですから。面白いですね。

Aメロディ後もう一度イントロのメロディが挿入されるのは、なんだかサビを出し惜しんでいるかのようです。”Blood”もそういう構成の曲ですけど、イントロから聴き手の高揚感への期待は煽られ続けていて、かつテンポも速い曲なのに、こういう構成なのは聴き手を焦らしているかのようです。

“Pull a sentence from your lips to keep them quiet
What they want to hear”
 (口から判決を引き出して 奴らを静かにしておいてやれ
 奴らが聞きたがっている事を)

ここまで聞いてくると、歌詞の上では「we – you – they」という三者の関係があることに気付きます。Editorsの歌詞のいくつかでは、I – you – theyの三者が登場して、特にtheyは、Iとyouの比較的パーソナルな空間の外野にいるような人々を、まとめて指しているように見えることが多いです。
この曲では、しかし、youというのはIからは相対的に遠い存在のようです。youという存在が、Iを含めた周りの人々(we)に不敵に影響を与えていることが示唆されています。weはyouによって振り回される存在。
そういった見方が、語り手に“You’re the night the dirty night”と二度も歌わせているのでしょう。

そして“No one left to fear”の叫びからサビに入ります。
こんな叫ぶような、叩きつけるような歌い方はこれまでの曲にはありません。一語一語が力強さを持っていて、情熱が込められているようです。
“sun goes down”“broken town”
“bleed”“factories”
“tonight”“sight”
“you love”“in love”、の韻が軽快です。
“finger”はアメリカの俗語で「密告者」、”factory”にはイギリスの俗語で「刑務所、警察署」の意。これらの言葉が示唆することはともかくとして、このアルバムの文脈には沿うイメージの言葉です。堕落した街、穢れた街。
でも、冒頭に引用した部分は、数少ないストレートでナイーブな感情の表れのようにとれます。“ones you love” (君が愛している人々)“ones in love” (恋をしている人々)の姿。そこに重ね合わせられる、語り手と相手のイメージ。そこに向かうとき、そのときは、自分と一緒にいてほしい。
“Keep with me Keep with me”…と、短いフレーズを速いテンポで連呼するのはここまでの曲にはない歌い方です。ひたむきさを感じさせます。あと、ここに合わさるギターの音も良いんですよこれが。

“Smile for once for a moment it makes us happy
What we need is here”
 (一度だけほんの束の間微笑めば 僕らは嬉しくなる
 僕らの必要なものはここにある)

この部分を見ると、we – youの間の関係はより明示的になるようです。ただ、これまでの歌詞と照らして考えると、この部分は文字通りのことを伝えたいというより、ちょっと皮肉的な響きがあるように聞こえませんか?

2度目のサビが再び聴き手を高揚に導きます。同じメロディ・歌詞を再び聴いても、それだけ高揚を感じさせるのは、きっとこのサビそのものにその力があるからでしょう。
間奏に入っても、ギターだけサビのメロディを繰り返しているのが好きです。これまでのパワーの一部を引き継ぎながら、新たな楽器の力を取り込んで、さらなる高みに聴き手を連れて行くようです。
その最高点は、ここまでの曲では到達しなかった場所。
アルバムの聴き手はきっとここでアルバムの真骨頂を見ると思います。

“Keep with me Keep with me”…

 

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カテゴリー: 良いモノ語り, 良いモノ語り -音楽

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