『All Sparks』レビュー -アルバム『The Back Room』 各論編

またまたEditorsの各論です。とりあえずアルバム『The Back Room』の曲の分はどんどん行きますよ。それが終わったらまた別の作品の記事を書くかもしれません。
今回は5曲目、『All Sparks』から。

ライナーノーツ的解説

“Well be careful angel this life is just too long
All sparks will burn out in the end”
 (気を付けるんだ愛しい人よ この人生はあまりにも長すぎるから
 全ての火花は最後には燃え尽きるだろう)

イントロから面白い曲です。
ドラムの刻み方もそうですし、ベースライン、そしてギターのサウンドの全てが独特で興味深いです。テンポは前曲より多少速くなり、こぢんまりとはしているけどダークな印象のサウンドです。

この曲のAパート・Bパートの歌詞は、相手(you)がどんな人物であるか、についての評価に徹しています。
「君はまだ訊かれてもいない質問に答えている」
「君は道端で跳ねているタバコみたいに燃える」

「君は、意見を欲しがる人々にそれを投げかけている」

人を指して「君は路上で跳ねているタバコみたいだね」とはどんな言い方なんでしょう。
そして、たびたび繰り返される、“All sparks will burn out in the end”のフレーズ。「激しい火はすぐ燃え尽きる」というような考え方を連想させます。

このフレーズは、冒頭に引用した歌詞を見るとより理解しやすくなります。
「この人生はあまりにも長すぎるから」の箇所です。あまり歌では聞かない価値観な気がするのは私だけでしょうか。
というのも、多くの歌で聞かれるのは、「命短し恋せよ乙女」というような価値観だからです (私の偏見だと思いますが)。私達が輝ける時間は少ない、その熱い感情をもったいぶらず相手にぶつけなさい。ある意味、この歌詞で語られる相手は、それを地で行くような存在でしょう。
それに対して語り手はこう諫めます。「この人生はあまりにも長すぎるから」、そんなに生き急ごうとしてどうするんだ、と。

こう言われる人はたぶん、余計なお世話を感じざるを得ません。お前にそんなことを言われる筋合いはない、と。
しかし、語り手がなぜわざわざこんな風にたしなめるのかは想像しやすいではないでしょうか。相手に対して本当に気が無かったら、こんなことは言いませんよね。

要するに、語り手の言葉は、語り手の想いの反映です。
ただ、この歌詞が興味深いのは、語り手が相手に言い寄ろうとしているとき、まるで人間の全生涯を俯瞰しているような視点が含まれていることです。
このアルバムの他の曲では、都市の退廃的で享楽的なイメージが何度も登場します。この曲もそのイメージにしたがっているとすれば、語り手も相手も同じ爛れた街で生きているのでしょう。
ただ、語り手は、相手が後先の考慮もなしに生きようとしているように見えて、それを憂えています。しかし、そもそもなぜそれを憂えるのでしょうか。

それは、この街で誰もが将来が見通せないから、希望が持てないからではないでしょうか。
将来のことが分からなければ、人は目先の快楽に逃げたくなります。確かにそういう生き方は楽でしょうが、それだけ早く燃え尽きてしまうでしょう。「全ての火花は燃え尽きる。」
しかし、それでもなお、語り手が相手をたしなめようとしているのは、自分自身も将来を見通せない中、どこかにある希望を手探りして、この街から抜けだそうとしているからかもしれません。
そして、その末にその希望を相手の中に見出したからなのかもしれません。

鬱屈したフラストレーションとか、ダークな中にある希望というのは、このアルバム全体に広がる心情で、トム・スミスもそれを認めています。これもそれに沿った曲でしょう。

[2013/9/29 記事の最後の方、言ってることの筋がよく通ってなかったので更新しました]

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カテゴリー: 良いモノ語り, 良いモノ語り -音楽

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