『Fall』レビュー -アルバム『The Back Room』 各論編

今回はEditorsの「良いモノ語り」更新に戻ります。アルバム『The Back Room』の4曲目、『Fall』から。

ライナーノーツ的解説

“I wanted to see
I wanted to see
I wanted to see this for myself”
 (僕は見たかった
 僕は見たかった
 僕は自分でこれを見たかった)

ここまでアルバムを通して聴いた人は、ここに来て急に曲のテンポが変わることに気付きます。
疾走感ある曲の連続から突然、スローで眠たげなサウンドが出現します。良いメリハリになっていますね。

イントロのギターとベースが好きです。郊外の住宅地の午後のうら寂しさのような感情が喚起されます。メロディが2度繰り返される辺り、時間の使い方も非常にゆっくりしています。

“With my eyes closed I look closer” (目を閉じると もっとよく見える)
この歌詞ですが、日本版アルバムのボーナストラックに収録されている”Come Share the View”のサビとどこか似通うものを私は感じます。
“My eyes are closed
I’ve never seen so far”
 (僕の目は閉じていて
 こんなに遠くまで見えたことはない)

これがその歌詞です。どうでしょうか? 
“Fall”も”Come Share ~”も同時期に曲・歌詞ができているのですが(EditorsがSnowfieldだった時代に既に曲があります)、ともかく、あえて逆説的なことを書いていますね。
こういった、普通の知覚とは異なる方法で世界を捉えようとしている、普通の見方から脱却することで新たな世界を知る、という思いは他のいくつかの曲に見られる気がしますがどうでしょう。(例:”In This Light and on This Evening”など?)

サビのバックに聞こえる、人のコーラスのような、強くエフェクトをかけたギターのような音が耳を引きます。
歌詞はシンプルな繰り返しなのですが、どこか痛切さが感じられますね。「総論」でも書きましたが、Editorsの歌詞で繰り返される部分は、「伝えたい」という気持ちがもっとも表れる部分です。
そして、サビの終わりで演奏が一瞬休止し、余韻があります。こういった「間」の取り方も他の曲ではあまり見かけませんね。

“These dark pubs we drink in
Somehow light up when I’m with you”
 (僕らが飲んでるこの暗いパブも
 君が一緒にいるといくらか明るい)

この歌詞は、語り手が相手をどう思っているかを表すこの曲の数少ない部分です。
pubという場所の取り方もやっぱり都会的(urban)。これまでの曲にも通じる背景意識です。

2度目のサビの後がこれまた切ないです。ボーカルとリズムギターだけのシンプルな入り方があってから、ざらついた、気だるく引き延ばされたようなギターの音。
ここから徐々に色々なサウンドが加わり、曲はアウトロを迎えます。コンスタントなドラムの音と対照的な、かき乱れるようなギターサウンドがなぜかマッチするんです。

アルバムの4曲目にして、聴き手はEditorsの新たな側面を発見することになります。若さと勢い任せだけじゃない、丁寧な音の感覚。この曲でさらに彼らの音楽への興味をかき立ててから、次の曲が始まります。

おまけ:Snowfield時代の曲。現在のものと聞き比べてみましょう。

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カテゴリー: 良いモノ語り, 良いモノ語り -音楽

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