『Munich』レビュー -アルバム『The Back Room』 各論編

前回から間が空きましたが、このブログの更新頻度はこんなもんです。はい。今回の各論は、アルバム『The Back Room』 (2005) の2曲目、『Munich』です。

ライナーノーツ的解説

“I’m so glad I found this
I’m so glad I did”
 (僕はこれが分かってとても嬉しい
 僕はとても嬉しいんだ)

「総論」でも書きましたが、私はこの曲で初めてEditorsを知りました。

初めて聴いて以来、あのギターの高い、駆け抜けるような旋律がしばらく頭から離れなかったのを覚えています。
また、当時洋楽の歌詞から英語の勉強もしていたので、気になってこの歌詞も訳していました。つまり、彼らの抽象的な歌詞と出会ったのもこれが初めてだったわけです。「全部訳せるけど何を言ってるのか分かんねぇ!」っていう英語は初めてでした。

アルバム2曲目に置かれたこの曲は、メジャー向けの目玉ソングの一つです。
アルバム発売前から、彼らは既にこの曲のシングルなどである程度の知名度を得ていたので、これもアルバムの最初の方に配置したのかもしれません。

曲の全編を通して、他のバンドをもって代えがたい、ギターの金属質の高い音色が聞け、イントロからそれは走り出しています。まるで夜空に、ネオンで明るいひっかき傷を残すよう。最初聴いたときはギターに聞こえませんでしたね。
一歩一歩、地面をしっかり蹴って走るようなドラムも心地良いです。クセになる。

冒頭に引用した歌詞がAパートの歌詞です。このフレーズが2回繰り返されますが、正直言ってこの時点では聴き手には何のことやらさっぱり。
そしてそのままサビになだれ込みます。

サビのギター、泣き叫ぶような、夜の都市に響き渡るような音が耳を捉えます。エコーした、広がりのある感じ。シンプルといえばシンプルですが、でも人の心を掴みます。
「人は壊れやすい物なんだよ。君ももう分かって良いはずだ。彼らへの態度に注意して。
人は壊れやすい物なんだよ。君ももう分かって良いはずだ。君は自分から話さない。」

サビの歌詞に登場する「君」がどんな人物であるかは示唆的です。
多くの人を惹きつける魅力を持っていながら、本心が読めないために人の心を惑わしているようです。(これはアルバムの他の曲でも垣間見える人物像です。) 都会的(urban)な人間関係のイメージ。心からの信用ができない、一時的な、脆いもの。

Bパート、Cパートと聞くことで、歌詞に登場するyou と語り手との関係についてより多くのことが示唆されます。あと一歩を踏み出せない、相手に踏み込んでほしい、しかしどうなるかは分からない。
いずれのパートもサビの高揚感への繋げ方が良いです。

アウトロはイントロのメロディに乗せ、サビの一節が特に繰り返されます。
上では、「君は自分から話さない。」と訳しましたが、実際どうなんでしょうね? 歌詞カードには「話しかけられたら話をするんだ」とあって、私には少し違和感があるのですが、かといって他に上手いやり方が分かりません。
ラストの二節の主語はそれぞれ、HeとShe。Editorsの曲で三人称単数の代名詞が出ることは多くないので、なんだか意味深ですね。

全体に、冷たい疾走感と秘めた情熱が同居するように感じられます。後期のEditorsの曲に比べれば、これでも曲として構造がシンプルですが、やりたいことがはっきりしていると言えば良いんじゃないでしょうか。
最後に、タイトルの”Munich”の意味について。歌詞の中に一度も登場しない以上、歌詞全体のテーマからの連想で考えなければなりません。
『新英和大辞典 第6版』(研究社)には、”Munich”には、文字通りの「ミュンヘン」の意味以外に、「(外国の圧迫に対する)宥和、譲歩、屈辱的宥和政策」の意味があるそうです。1938年のミュンヘン条約(Munich Agreement)から来る用法のようですね。
誰かの圧力による(屈辱的)譲歩という点が、この曲と連関していそうじゃないですか。

おまけ:MunichでのMunichのLive

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カテゴリー: 良いモノ語り, 良いモノ語り -音楽

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